bekiranofuchi’s blog

社会を独自の視点で描いてみたいという男のつぶやき。

『私たちはなぜ税金を納めるのか:租税の経済思想史』-書評

 

納税は義務ではなく権利だ!
なんの疑問も抱かず納税を義務として受容するこの社会に反感を覚えて数十年、ようやく我が意を得たる一冊に邂逅した。
17世紀英国のホッブズ、ロック、19世紀ドイツのワーグナーそして20世紀のルーズベルト大統領と大思想家、政治家をたどり租税思想の歴史をみごとに展開し解説する。
租税とは国家が市民に提供する生命と財産の保護への対価であり、国家が財産、生命を脅かすなら納税停止だけでなく革命権を市民は保持し、あくまでも個人が議会を通じて同意した上で国家に支払う。
英国市民革命を経て形成されたこの租税の思想はドイツにおいて財政目的のほかに社会政策目的が追加され、米国ルーズベルトにより租税を全面的に政策手段として用いるニューディル政策へと変遷していく。しかしいまや経済のグローバル化により国家の課税能力は移動性の高い所得源に対する能力を喪失しつつあり移動性の低い税源への依存度を高めている。このような状況において筆者は受益と負担の関係を国民国家という狭い枠組みで完結的に考える習慣から金融取引税や国際連帯税を例にあげグローバルな規模で租税を考え直すべきと結ぶ。

私のまとめは、アプリオリに納税を義務として受け入れた情緒的国民性を担保に原発被爆による生命への、そして円の叩き売りによる資産への脅威を看過して国民の同意なき租税の暴走を黙認してよいのか、このまままでは国家、領土にステッキーな移動性の低い国民性を突かれ、固定資産税や間接税という移動性の低い税源はなす術もなく増税の格好の餌食になるではないだろうか。