先見性と構想力に秀で文才も優れたものがあり
本当に惜しい人を日本は失ったものだと思います。
そんな堺屋さんにまつわる思い出話です。
堺屋さんが経済企画庁長官を退任されしばらくたってからのことでした。
ある人の私的なパーテイで堺屋さんが「大臣になりたがる人の気持ちがわからない」
と語り始めました。
経企庁長官に就任して初めての出張旅行をしたときのことです。
夕食を終えホテルの部屋に戻り翌日の講演原稿に目を通していると
突然ドアにノックがあり同行の経企庁職員が入ってきました。
何かと聞くと、万が一に備えて講演の資料など一式をお預かりするとのこと。
彼を待たせてその場で原稿に目を通して書類カバンに入れて渡しました。
翌日、講演会場の控室で昨晩の職員から書類カバンを受け取りました。
演壇にむかいカバンから原稿を取り出した堺屋さんはビックリしました。
なんと原稿には赤ペンで修正やら追加がのたうちまわっていたというのです。
しかし堺屋さんは自ら手にした原稿ですから赤ペンに惑わされることなく講演を終了しました。
演壇をおりるや無礼な行為にたいして怒り心頭に達した堺屋さんは控室に駆け込み例の職員を呼び出しました。
ところが怒鳴りつける隙も与えず彼は開口一番「お渡しした通りに読んでもらわないと困ります」
とクレームをつけてきたというのです。
怒りを抑えて「なぜ勝手に私の原稿を直したのか、またその説明もしないのか」と聞きました。
彼の答は明快でした。「いままでは私たちが原稿を書いて大臣にはその通り読んでいただいていました。
ところが今回、原稿を書かれた大臣はあなたが初めてでした。そこで私たちでチャンとしたものにして差し上げました」と、
その顔は、なぜこんなことを聞かれなくてはいけないのかと憮然としたものでした。
堺屋さんは彼に申し渡しました。
「原稿は私が書いてその責任はすべて私がとるので一切の関与はしないでくれ」
彼は「承知しました。でも大変ですよ」と言って部屋を出たそうです。
これだけの話ですが日本の大臣(政治家)と官僚の関係がよくわかる話でした。