bekiranofuchi’s blog

社会を独自の視点で描いてみたいという男のつぶやき。

公務員法の不思議

私達が理解している公務員のイメージと、法律で定められている「公務員」とではどうも違っているように思えます。

憲法国家公務員法とでは公務員に関する明確な定義がなく、その役割にも齟齬があるようです。そのような疑問を考察をしてみました。

 

Ⅰ.憲法における公務員とは。


日本国憲法』 

第15条(公務員)

 公務員を選定し、及びこれを罷免することは国民固有の権利である。 

2 すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。 

3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

 

下線は私が引いたものですが、この条項でいう公務員とは、私たちが通常に公務員と呼んでいるお役所の職員ではなく、どうも選挙で選定される政治家のことになりそうです。

また公務員には国家公務員と地方公務員がありますが、この規程はどうなっているのでしょうか。国家公務員については憲法、第7条の5号および73条の4号に「官吏」として記載があります。なぜ国家公務員ではなく官吏となっているのでしょうか。

「官吏」という用語は国家公務員法第1条の2号に憲法73条を援用した記載がありますがその定義はなく1号の「国家公務員たる職員」を暗喩する形になっています。つまりこの二つの条文(官吏の定義のない)から国家公務員の意味するところを解読せよと解されます。
 

 

第7条

天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。

二 国会を召集すること。

三 衆議院を解散すること。

四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。

五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。

 (以下略)

 

第73条(内閣の職務)

内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。

一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。

二 外交関係を処理すること。

三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。

四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。

  (以下略)


Ⅱ.国家公務員法における公務員とは。

憲法では国家公務員の用語も記載もありませんが、国家公務員法というものがあります。


国家公務員法』 

第1条

この法律は、国家公務員たる職員について適用すべき各般の根本基準(職員の福祉及び利益を保護するための適切な措置を含む。)を確立し、職員がその職務の遂行に当り、最大の能率を発揮し得るように、民主的な方法で、選択され、且つ、指導さるべきことを定め、以て国民に対し公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とする。

2 この法律はもっぱら日本国憲法第73条 にいう官吏に関する事務を掌理する基準を定める。

 (以下略)  

第2条

 国家公務員の職は、これを一般職と特別職とに分つ。

2 一般職は、特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を包含する。

3 特別職は、次に掲げる職員の職とする。

一 内閣総理大臣

二 国務大臣

三 人事官及び検査官

四 内閣法制局長官

五 内閣官房副長官

五の二 内閣危機管理監及び内閣情報通信政策監

五の三 国家安全保障局

五の四 内閣官房副長官補、内閣広報官及び内閣情報官

六 内閣総理大臣補佐官

七 副大臣

七の二 大臣政務官

七の三 大臣補佐官

八 内閣総理大臣秘書官及び国務大臣秘書官並びに特別職たる機関の長の秘書官のうち人事院規則で指定するもの

九 就任について選挙によることを必要とし、あるいは国会の両院又は一院の議決又は同意によることを必要とする職員

十 宮内庁長官侍従長東宮大夫、式部官長及び侍従次長並びに法律又は人事院規則で指定する宮内庁のその他の職員

十一 特命全権大使特命全権公使、特派大使、政府代表、全権委員、政府代表又は全権委員の代理並びに特派大使、政府代表又は全権委員の顧問及び随員

十一の二 日本ユネスコ国内委員会の委員

十二 日本学士院会員

十二の二 日本学術会議会員

十三 裁判官及びその他の裁判所職員

(以下略)

Ⅲ. 不可解なこと。

1.国家公務員法では、憲法でいう官吏を公務員と呼んでいます。そして公務員は職員集団の福祉および利益の保護確立をする。その上で、国民に対する職員の集団主義的な運営を目指すものとしています。

2.この内容を換言しますと、国民ではなく公務員が主役でまず公務員自身の福祉および利益の保護を確立して、そののちに国民に対する集団運営を行う、これでは、お役人が事実上の主権者ということになりかねません。そして政治家は特別職として公務員の添え物扱いとなっています。いうならば添え物を選ぶ国民に主権はなくお役人が主権者という隠喩になっているように思えます。

3. 公務員の任用は「国家公務員法および地方公務員法に基づいて、公平な基準により能力を試験し、適任と認められたものを選抜すること」とされています。

  しかし国家公務員の特別職に関する規程はありません。政治家については憲法で任用が規定されている(選挙)ということでしょうか。そうであれば裁判官や宮内庁長官などの選挙がないのはおかしなことです。

 以上のように公務員、特に国家公務員とは不可思議な存在に思えます。                        

                                  以上

 

 

*ご参考までに地方公務員法の一般職と特別職の規程に関する第3条および第6条任命権者を以下に掲載しておきます。

第三条 地方公務員(地方公共団体及び特定地方独立行政法人地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)のすべての公務員をいう。以下同じ。)の職は、一般職と特別職とに分ける。

2 一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする。

3 特別職は、次に掲げる職とする。

一 就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職

一の二 地方公営企業の管理者及び企業団の企業長の職

二 法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた委員及び委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤のもの

二の二 都道府県労働委員会の委員の職で常勤のもの

三 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職

四 地方公共団体の長、議会の議長その他地方公共団体の機関の長の秘書の職で条例で指定するもの

五 非常勤の消防団員及び水防団員の職

六 特定地方独立行政法人の役員

(この法律の適用を受ける地方公務員)

第四条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。

2 この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。

(人事委員会及び公平委員会並びに職員に関する条例の制定)

(任命権者)

 第六条 地方公共団体の長、議会の議長、選挙管理委員会、代表監査委員、教育委員会、人事委員会及び公平委員会並びに警視総監、道府県警察本部長、市町村の消防長(特別区が連合して維持する消防の消防長を含む。)その他法令又は条例に基づく任命権者は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律並びにこれに基づく条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、それぞれ職員の任命、人事評価(任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価をいう。以下同じ。)、休職、免職及び懲戒等を行う権限を有するものとする。

2 前項の任命権者は、同項に規定する権限の一部をその補助機関たる上級の地方公務員に委任することができる。