bekiranofuchi’s blog

社会を独自の視点で描いてみたいという男のつぶやき。

『幼児教育の経済学』ジェームズ•J•ヘックマン著ー書評

 

人間と経済の関係を出生率1.8などと無機質な数値でしか把握できず、公平性と効率性は公的投資における二律背反命題だなどという国の問題点がよくわかります。

また17歳以下の子供の貧困率が16.3%という日本の公共政策に携わる人のみでなく幼少期の子供、孫を持つ人に一考を促す本でもあります。

著者のヘックマン教授は自発的選択によって生じる予測の歪みを修正する方法により2000年のノーベル経済学賞を受賞。

ヘックマン教授は米国における就学前プロジェクトの分析(3-4歳から40歳までの被験者と非被験者の経過分析など)から人生で成功するか否かは認知的スキル(算数、国語などのスキル)だけでなく非認知的な要素(肉体的・精神的健康、根気強さ、注意深さ、意欲などの社会的・情動的性質)が欠かせないとして幼少期への教育介入論を展開します。

この論理に関して教育、経済、法律、心理学など各界の専門家10名が賛否の意見を述べ各コメントに対してヘックマン教授が回答する形で自説を集約します。

いわく恵まれない子供の幼少期への公的投資はその利益率が第二次大戦から2008年までの米株式配当額を上回り、政策的な再配分というものは社会の不公平を減じるものの長期的には社会的流動性や社会的包容力を向上させない、それよりも恵まれない子供の幼少期への公的「事前配分」をすべきである。

その結果として低所得層に終わる人が中間所得層に浮上し暴力や社会保障コストを減少させていく、公的投資の公平性と効率性をともに実現し人と経済の乗数効果を生み出すとしています。