現代政治の主要な概念は国民国家とグローバリズムそして民主主義であろうと思います。
この三つの概念のうち二つは共存が可能であるが三つともに共存することは難しい、
と政治のトリレンマを説いたのはダニ・ロドリックの「グローバリゼーション・パラドックス」でした。
たしかに「グローバリズムと国民国家」そして「グローバリズムと民主主義」は仲睦まじく進行してきたように思えました。
ところが、グローバリズムの旗手である米国は半導体や製造装置の新たな対中国輸出の規制強化策に乗り出し、
グローバリズムの恩恵を享受していた西欧では極右政党が台頭するなど、グローバリズムが行き着く先では
民主主義とも国民国家とも折り合いが悪くなってきたように思われます。
国民国家は国境という他国との明確な物理的線引きをもって形成される国民の想像共同体といえるものですが、
グローバリズムとは国境を越えることで形成される資本の共同体といえるのではないでしょうか。
越境したグローバリズムつまり資本共同体と国民国家は共謀・結託することで民主主義政治を市場化してしまったように思えます。
そして国家の市場化つまり植民地化に成功したグローバリズムは新自由主義という高邁な理念をかなぐり捨て資本の収奪的な本質
つまり帝国主義イデオロギーを普及すべく、国民国家の分断と解体に傾注しているように思われます。
グローバリゼーションがもたらした資本と雇用の流動化は今後あらゆるもの(価値)を金融化して
国民国家における労働(人)価値の低下を助長するものと思われます。