政府は昨日、岸田首相の目玉政策である「新しい資本主義」の実行計画案を公表しました。
その計画によると、官民連携のもとで経済成長を目指すとして、「人」、「科学技術・イノベーション」、「スタートアップ」、
「グリーン、デジタル」の4分野に重点的な投資を行うとしています。
首相官邸ホームページのトップ画面には、成長と分配の好循環のイメージを描きその下に「成長と分配」それぞれの戦略が掲げられています。そこで
このイメージに沿った投資戦略であるのかみてみました。
ちなみに公表された4つの重点的な投資項目の内容は次のようなものです。
「人」への投資
賃上げへの取り組み、転職やキャリアアップについて社外で相談できる体制の整備、非正規を含めた能力開発や再就職の支援。
「科学技術・イノベーション」
量子技術やAIなどで国家戦略を策定、総理大臣官邸に「科学技術顧問」を置く。
「スタートアップ」
起業支援を進める5か年計画を策定、スタートアップ企業が事業全体の価値を担保に資金調達を可能とする制度創設。
「グリーン、デジタル」
脱炭素社会に向け今後10年間で官民協調して150兆円の関連投資を実現。
そして、「資産所得倍増プラン」なるものが追加されています。
これについては、個人の金融資産を貯蓄から投資にシフトさせる。
そのため、個人投資家向けの優遇税制「NISA」や「個人型」の確定拠出年金「iDeCo」の改革を策定するとあります。
どこを見ても「分配」に関連するようなものは探し出せません。
いっぽう、傍線を付した個所から読み取れるのは公金(税金)を使用して私的資産を安全資産からリスク資産への移行を促進する仕組み構築
という文脈ではないでしょうか。
GPIFが公金の半分をリスク資産に配分するような状況で今度は個人資産までリスクに晒そうというのでしょうか。
さらに気がかりなことは、スタートアップ企業に実質無担保で資金支援をおこなうとすれば私企業に公金を投資するという不公平かつ公金のリスク化という問題が生じますが、
国民が納得する対処はどのようにするつもりなのか。
また日々将来への不安が募る社会情勢のなか、金融資産を投資に回せるほど経済的に余裕のある人はどれだけいるのか、
経済的余裕のある人は公助により資産を増加させることができても、経済的余裕がなく投資ができない人は富者への公助という税金を収奪されるだけではないか。
このように持てる者はますます豊かに、持たざる者はさらに貧しく、国民の分断化を促進する公助になるのではないだろうか。
資本主義とは、果てしなき資本の増殖を宿命とするものゆえ、弱者切り捨てと強者支援による貧富の格差拡大という方策により
落差エネルギー(人工的なバブル)を生み出し続けなければならないのであろうか。
水は高きより低きに流れ落ち落差エネルギーを生む、富は持たざる者から持てる者へ流れて格差エネルギーを生み資本増殖に寄与するのだろうか。
「新しい資本主義」とは何かと問う前に、まず「資本主義の本質とは何か」、政府の説明をはぜひとも聞かせてほしい。