bekiranofuchi’s blog

社会を独自の視点で描いてみたいという男のつぶやき。

ロシア侮れず

今朝のTV報道番組にエマニュエル・トッドが出演していた。司会者がロシアやアメリカはじめ世界情勢についてトッドのコメントを求め、それに対して番組の常連らしい橋下徹木村太郎が質疑応答する形で進められた。

トッドが国民信頼度や教育成果など歴史人類学者としての観点からプーチンが失脚することはないだろうという予測を話すと、橋下は政治は現実であるからプーチンを如何にして引きずり落とすかが問題だなどとトッドのコメントに関する橋下、木村の意見はまったく見当違いで議論にならぬまま進行した。さらに日本はウクライナなどよりアメリカの国家システムの崩壊を案ずるべきだとトッドが話すと、橋下はウクライナなどとは!と気色ばみ、木村太郎アメリカの次期大統領はトランプだろうなどと混ぜっ返すあり様であった。

知の巨人トッドと日本の知の巨人と銘打った番組だったが、橋下、木村が日本の知というならまさに日本の劣化を見せつけられ番組だった。

 

それでも、一つ気になったのはプーチンは消えずというトッドの発言だった。

ロシアと西欧に関して私が理解するトッドの持論とは、フランスの協力によって完成をみたドイツ帝国圏(ベネルクスオーストリアチェコスロベニアクロアチアそしてフランス)と古典地政学ハートランド論の協働作業である。その持論を強く印象づけたのは、2014年8月メルケル首相がドイツの権威主義的文化をかなぐり捨て臆面もなくキエフを訪問したことだった。

以下に引用するのはメルケル首相がキエフを訪問した翌年にトッドが記した文章である。7年前にはロシアのウクライナ侵攻とその行き先を予測していたと思える。

「もしロシアが崩れたらあるいは譲歩をしただけでもウクライナまで広がるドイツシステムとアメリカとの間の人口(ドイツ帝国圏 5億人超 アメリカ 3億人超)と産業(ドイツ帝国圏 実質GDP 12超ユーロ アメリカ 実質GDP 12超ユーロ)の上での力の不均衡が拡大して西洋世界の重心に大きな変更が起こりアメリカシステムの崩壊に行き着くだろう」(人口とGDPは2015年のトッド著作に拠る)

さらに、共産圏諸国が崩壊後に残したのは時代遅れな産業システムだけでなく教育レベルの高い住民たちでもあったというドイツ帝国圏には優位な事実がある。つまりアメリカが最も恐れなければいけないのはロシアの崩壊であるとトッドは言っているのである。

トッドはロシア国民の多くはプーチンに満足しておりまた教育においては技術系の大学生が全学生の25%を超えておりアメリカの7%に対し総人口で見てもアメリカに勝るとものTVで語った。

プーチンの消長はともかくロシアの動向は注視すべきと思った次第である。