bekiranofuchi’s blog

社会を独自の視点で描いてみたいという男のつぶやき。

北朝鮮をめぐる地政学的考察と日本の失敗

北朝鮮をめぐる国際情勢の動きは地政学的なアプローチだけでなく地経学的分析も必要だと思います。

まず地政学の本質が領土の征服から接続優位性に変化していることに目を向けるべきです。

先の大戦で明らかになったことは領土征服が必ずしも国益にはならず領土の維持コストが利益を超過する損失リスクを必然的に抱え込むということでした。とくに中国戦線では補給線の欠如が征服した領土を「持つことのリスク」を知らしめました。いっぽう中国はドイツから優秀な軍人を雇用して軍事力の強化を図り援蒋ルートという補給線を構築して英米からの強力な支援を確保したのです。その結果はご存じのとおりです。領土征服への執着が領土を放棄してでも補給線を維持した接続性に敗北したのです。持つことより繋がることの重要性を知らされたのです。

 

もう一つの教訓は地経学です。

兵器に代わる手段としての経済力です。あの戦争で日本が息の根を止められたのはABCD包囲網という経済制裁でした。そして勝てないまでも緒戦の段階で優位な手打ちに持ち込めなかったのはなぜか。真珠湾攻撃の失敗です、なぜ反復攻撃をして徹底的な基地破壊をしなかったのか。なぜなら勝利よりも兵力温存を優先せざるを得ない貧しい国力ゆえでなかったのか。そこで国家が大国となるためには経済力をもってして初めて可能となることを身に染みて知りました。それゆえ戦後の奇跡的な経済成長をもたらしえたのです。

 

日本の教訓を生かしているのは中国です。

一帯一路とAIIBという資源確保のインフラ・ネットワークを構築したのです。

地理や地形など国の自然環境は変えることはできませんが日本を苦しめた地政学上のくびきであった資源はいまや経済力で賄えます。日本も経済力でエネルギー資源を買いあさり繁栄してきました、しかしまたもや補給線という接続性を軽視していたのではないでしょうか。日本をはじめTPP参加国や多くの国が恐れるべきことは、アメリカと中国が太平洋をはさんで戦争をするかではなく中国がインフラ・ネットワークを利用して不平等条約を押し付けてくることです。むかし英国が中国に対して行ったように。

FAAGのプラットフォームを中国はリアルの世界で構築しようとしているのです。

ノードの数に比例してネットワークの価値と効用は増大するという時代からべき乗則で増殖する次元に移行しています。

このままではWinner takes all となりかねません。

 

地政学も地経学も所詮は国益を最大化しかつ国民の繁栄を実現するための戦術論であり手段にすぎません。重要なことは国民が生活基盤を置く国家のビジョンでありその実現を図る戦略です。ところが日本には国家ビジョンがありません。

かってのアメリカには自由と民主主義の伝道師としての理念がありましたが今や「取引」が理念に取って代わってしまいました。

日本にも平和と個人の尊厳(憲法の要旨)という理念がありましたがアメリカよりいち早く

「取引」に理念を売り飛ばしてしまいました。

いまや国家の取引が政権維持の手段と化す有様です。

日本もアメリカも、国家が国民よりも市場の力に支配されるようになり民主主義は金主主義に模様替えしたのです。

中国は民主主義に頼らず国家を反映させる道を示してきました。しかし国民が繁栄を享受しているかは疑問です。

この背景には知性の劣化と不人気そして相対的な知能の優位にあると思っていますが長くなりますのでやめておきます。