トランプ米大統領が就任後、初となる首脳会談を英国のメイ首相との間で持ちました。
両国家のリーダーは経済的役割を縮小し民間活力の活性化を図りサッチャリズム、レーガ
ノミクスと称される経済的成功をおさめ国家の矜持を復活して新たな経済的発展を世界に
もたらしました。
この成功により英米両国は自由と民主主義の伝統ある先駆者としてのその地位をさらに強
固なものにして世界経済を引っ張っていきました。
両国がスランプから脱して国家の誇りと経済的復活をもたらしたものはなんでしょうか。
その大きな要因は「自由主義」を新たに定義しなおしたことではではないかと思います。
それは個々人の自由を重視しつつ弱者救済的な格差原理を提唱したリベラリズム=自由主
義の時代から、リベラリズムを批判し福祉政策など政府介入を否定し個人の全面的な自由
国家の役割はできるだけ規制して民間の自由を最大限に拡大する自由至上主義、
経済効率と効果の最大化のみを図る市場至上主義。この二つのイデオロギーは自由と民主
主義のレガシーを持つ英米の土壌だからこそ相性よく調和できたのだと思います。その結
果として今に至るグローバリズムの展開をみたのではないでしょうか。
自由と民主主義その果実としての経済的繁栄。なんとなく心地がよく耳ざわりの良い言葉
に大きな物語の夢を世界へ普及させてきたのではないでしょうか。
する「アメリカファースト」を唱える大統領を選出しました。
グローバリズムを先導してきた両国の大きな方向転換と思えました。
そこでその原因は何かと考えてみました。
ひとつはネオリベラリズムの徹底化がもたらした格差と分離だと思います。
いるのがその特質と思います。
(格差原理とは競争によって生まれた格差は最も不遇な人々の生活を改善することにつな
がるものでなければならないということ)
ム思考への蔑視であり、その結果としてもたらされたのが経済格差拡大であり IS にみられ
るような宗教回帰への過激性や難民問題だと思います。
経済のグローバル化では経済的効率を上げて効果を最大化するためには製造から流通や決
済などすべての経済活動プロセスを全世界規模で統合して画一化するのがベストな手段で
ありましょう。
しかし経済活動のみで人や社会まして国家は規制されるものではありません。
とくに社会制度や習俗、文化などは各国家のアイデンティと存立基盤にかかわる問題であ
り経済的効率や効果の価値という次元で論ずるものではあってはならないと思います。
英国の EU 離脱という選択とは、いまや EU の盟主となったドイツの価値観に基づく画一
化などはとうてい受け入れがたい栄光ある国家の独立と存立基盤を死守すべきという国民
の価値観が経済的な得失勘定を凌駕したものだと思います。
いっぽう米国は世界から離脱しようとしているように思えます。
ドイツが主導権を握る EU とは異なり世界の盟主はいまだ米国自身です。しかし第二次大
戦から 70 年世界の屋台骨を背負ってきた米国の疲労つまり米国民の精神疲労が大きな要
因ではないかと思います。
メルテイングポットと呼ばれる米国はまさに世界の縮図であり多元的で多様な人種、文化 、
宗教などを自由と民主主義のもと寛容に受容し発展してきました。しかし米国の繁栄をも
たらした自由と民主主義を自国以外に普及しようとしてベトナム戦争に介入してからとい
うもの海外への画一的価値普及作戦はことごとく失敗しました。
振りまき戦闘国では幾多のテロリズムを発生せしめて国民の戦争からついには権力者とネ
オリベラリズムのための戦いになり果てました。
画一的な米国価値観の押しつけは日本を除く世界から否定され挙句の果ては9.11の悲
劇を招いてしまったのです。
かたや国内では「自由と市場の至上主義」なるものは経済的価値という非民主主義的に決
められた画一的な価値の共有を徹底しました。その結果は持てる者と持たざる者との格差
じ、経済格差と多様化する価値のジレンマが自由と民主主義への懐疑を育む。
郷愁がトランプをして現状打破への起爆剤とせしめたのではないでしょうか。
英国民はドイツ帝国化する EU に、米国民は価値布教活動の失敗や格差拡大にも責任を取
グ」(エマニュエル・トッド)の声を上げているのではないでしょうか。
見つめなおす民族国家再編成の時代に移行していくような予感がします。