bekiranofuchi’s blog

社会を独自の視点で描いてみたいという男のつぶやき。

仮想敵国はどこか?

政府が来年度予算案に計上するという「長距離巡航ミサイル導入」が話題になっています。
長距離巡航ミサイルが防衛のみでなく攻撃目的にも供される可能性があり、憲法と政府方針との齟齬が危惧されるからでしょう。

当然ながら政府方針に対しては賛否両論があります。
政府方針への賛同派、懐疑派のマスコミ意見と世論です。
(賛同派)12月13日産経新聞「主張」欄。政府は、ミサイル発射が確実であり、他の手段がなければ、敵ミサイル基地への攻撃は合憲であるとの立場だ。「座して死を待つ」のは、憲法が認める自衛の趣旨に反するからだ。射程約900キロなら、日本海の上空から北朝鮮国内を攻撃できる。
(懐疑派)12月5日付朝日新聞。政府は、航空自衛隊の戦闘機に長距離巡航ミサイルを搭載するための調査費を2018年度当初予算案に計上する方針を固めた。有事の際に敵艦船などを攻撃するためとしている。ただ射程が長いため「敵基地攻撃能力」としての転用も可能で、専守防衛を堅持する政府方針との整合性が問われそうだ。

(世論)産経新聞とFNNが12月16日、17日に合同で実施した世論調査の結果では導入に前向き68.5パーセント、必要ない28.7パーセントとなっています。

専守防衛は基本姿勢だが「守」のため時には「攻」が必要だという情緒的な国民感情のあらわれでしょうか。このような空気を読んで安倍一強の国家社会主義(偽装民主国家)議会はこのまま予算方針を可決し長距離巡航ミサイルは導入されるのでしょう。

そこで問題の本質です。
長距離巡航ミサイル導入の意味するところは「守」から「攻」への国家軍備システムの思想転換であるということです。
では「攻」の対象になる敵ミサイル基地とはどこか、つまり仮想敵国はどこなのか。
中国かそれともアメリカか、ところがどうも政府もマスコミも北朝鮮を仮想敵国と考えているようです。
北朝鮮が仮想敵国などという刹那的で視野の狭い了見で一国の軍備システムの転換が安易に実施されていいものでしょうか。具体的な仮想敵国のない軍備システムなど画餅でまったく無意味です。それどころか地政学的に日本を仮想敵国とする国を生み出しかねません。

日本が仮想敵国を想定できないのは国家ビジョンがないから国家戦略もなく、したがい戦略完遂上でバリアーとなる仮想敵国も特定できないということでしょう。

大東亜戦争では陸・海軍それぞれの仮想敵国が異なるまま戦線を拡大し戦史上まれにみる大敗を喫して無条件降伏しました。
陸軍のソ連か海軍のアメリカか仮想敵国の一本化ができないままでは戦争の基本戦略が立てられません。あったのは主観と独善に基づく先見性も整合性もない無謀な戦術の繰り返しでした。

国家戦略がないまま仮想敵国も想定(あっても志がない)できず明確な戦略なき軍備の増強。また同じ過ちを繰り返しているような気がしてなりません。

ましてやトランプ大統領に忖度した米国兵器の購入だとしたらまったくお話になりません。
いまやることは憲法と政府方針の整合性(国家ビジョン)を包括したうえで腰を据えて国家戦略を立案することではないでしょうか。