bekiranofuchi’s blog

社会を独自の視点で描いてみたいという男のつぶやき。

『国家の罠』−書評


小泉政権の熱狂から10年経過したいま本書を再読。
そうすると安倍首相一人勝ちの背景が忽然と浮かび上がってきました。

あの当時は鈴木宗男氏への国策捜査に国民は熱狂しました。
国策を大義名分にした成り上がり政治家が外務省情報分析官と組んでの蜜月出世物語、さらに田中真紀子との対決が国民目線から悪役としての鈴木宗男を形成しマスコミが作り上げた劇場型検察ファッショの狂乱に国民を巻き込んだのです。

実はこの国策捜査の目的それは小泉首相ポピュリズムではなく日本という国家体制のパラダイム転換を国民に告げる号砲だったのです。

新たな国策とは、
内政ではケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線(大企業、金持ち、既得権益者の一人勝ち)外交では地政学的国際協調主義から排外主義的ナショナリズム(米国追従、似非極右への傾斜、体制翼賛)というものでした。

鈴木宗男氏は内政では地方の声を中央に反映させる公平分配路線を外交ではアメリカ、ロシア、中国とバランスのとれた関係を発展させようとし努力した政治家で、いうなればパラダイム転換前のニ要素を持った象徴的政治家でした。

彼を国策捜査のターゲットとしたことで失われた10年憤懣やるかたない情緒的国民の怒りを昇華させパラダイム転換が容易になったのです。

あれから10年、国家体制のパラダイム転換というシナリオは功を奏しました。
あの戦争でハイエク型傾斜配分路線と排外主義的ナショナリズムの両立を追求し日本を敗戦に陥れながらも戦犯を逃れ私財を蓄えた高級官僚その直系がいまや首相なのです。