bekiranofuchi’s blog

社会を独自の視点で描いてみたいという男のつぶやき。

『暴力の人類史』-書評

 西欧を主軸とした暴力(殺人を除く殺し合い)の歴史とその分析から人類の精神発展史ともいうべき論理を展開しています。

歴史学者をはじめとする暴力に関する膨大な資料を精査分類して古今東西の哲学から認知科学進化心理学までの知見を駆使し分析したその結果・・・。
人類の歴史における暴力はその件数も死亡者数も時系列的に減少しているとしています。

戦争をはじめとする集団的暴力では死亡した軍人など当事者のみならず紛争に巻き込まれた部外者など暴力に起因する死亡者数を推測する困難さは計り知れぬものがあります。
死亡者数の推測にあたり著者は過去のデータをその作成時期や特殊性からカテゴライズし分析手法として用いる対数やべき乗則などその根拠を示し統計解析の結果を明快な図表にまとめて暴力の減少現象を見せてくれます。

このようなデータ分析以上に素晴らしいのは認知科学者としてその手腕を披露した、暴力の原因としての「内なる悪魔」とその悪魔に打ち勝ってきた「善なる天使」の分析過程(これが暴力の人類史)です。

「善なる天使」とは共感、自制、道徳、理性。
「内なる悪魔」とはプレデーション、ドミナンス、リベンジ、サディズムイデオロギー

イデオロギーがなぜに「内なる悪魔」なのかはご一読を。