どう考えても一方的で不条理としか思えないロシアのウクライナ進攻。
その背景について、大ロシア主義(昔のソ連邦)の復活だとかプーチンの誇大妄想とか様々な議論がなされていますが、地政学的な見地からの意見は見られません。
そこで、独断と偏見による地政学的な解説を以下に試みます。
「Who rules East Europe commands the Heartland
Who rules the Heartland commands the World-Island
Who rules the World-Island commands the World」
*World-island とは南北アメリカを含む小さな島全部(新大陸)を除く旧世界のこと。
これは地球表面の9/12は海、2/12が旧世界大陸、その他が1/12という理解に基づく。
Heartlandについてマッキンダーは次のように述べている。
「ユーラシアの北の部分であり、主としてその内陸の部分、北極海の沿岸から大陸の中央の砂漠地帯に向かって延びており、
バルト海と黒海とのあいだの大きな地峡がその西側の限界になっている。」
この概念では地図上で明確に限定することはできないが、バルト三国、ポーランドからベラルーシ、スロバキア、チェコ、ハンガリー、
とくにバルト海と黒海を結ぶ最短ルートはポーランドとウクライナまたはバルト三国、ベラルーシとウクライナを貫く直線となる。
言うなれば、帰属不明のベルト地帯であり実在する場所というよりも相対的な概念というべきかも知れない
ヒットラーがポーランド侵攻で世界大戦の幕を開けると、即座にソ連がポーランドに侵入、その裏で両国が結んだ独ソ不可侵条約とは
マッキンダーの呪縛のなすものともいえる。
またナポレオンはロシアに向かいハートランドを横断し「国の地理を理解すれば、その国の外交政策がわかる」といったといわれる。
ヒットラーがその「生存圏理論」に心酔したドイツの地政学者K.Eハウスホーファーは次のごとく語っている。
「国境は生ける有機体であるから国境の安定を求めるのは衰退に向かう国だけで、活力に満ちた国は道路を建設する」
「条約やその他の取り決めで決められた国境をただ地図の中に見るのではなく、その不変の地形的要素からどのようにして
発展の契機を読み取るか、文字通り方法手段としての地図の読み方を長年にわたり訓練されてきたのがドイツ人である」と
マッキンダーはいう。
地政学とは、「国家戦略を決定するために国が考慮に入れなくてはならない外部環境についての研究である。
その環境とは生存と優位を求めてともに争う他国の存在である。つまり人間の分断に地理がおよぼす影響のことだ」
(R.Dカプラン、米国ジャーナリスト)
国民国家、日本の拠り所は国土のみであるという日本人には以上のような論理は容易に受け入れられないでしょう。