bekiranofuchi’s blog

社会を独自の視点で描いてみたいという男のつぶやき。

日本は衰退する

このまま行ったら「日本」はなくなってしまうのではないかという感を日ましに深くする。「日本」という国はなくなり、その代わりに極東の果てに大ウソで塗り固めた虚飾のネオンが灯る無機質で空虚な孤島がポカリと浮かぶことになるのだろうか。

 

人々は昔から今まで様々な角度から国家の衰亡を論じてきた。

ローマ共和制国家、マヤ都市国家ビザンティン帝国ソビエト共産国家など輝かしき繁栄を歴史に刻んだ国が何ゆえに衰退していったのか、幾多の論考にあたり浅学菲才を恥じることなく共通項を集約してみた。

結果、国家衰退の原因は繁栄に驕った権力が選択した「権威主義専制に依拠した収奪的な政治手法」と「略奪的な高賦課税と指令型経済制度」この二つに帰するところ大であるとの結論に至った。さらに為政者の自己陶酔と膨張本能、反対派への粛清と報復、これらが国民の論理的思考を委縮させ為政者の独善的主観をあたかも客観的合理性であるかのごとく錯覚させたのである。皮相的にみれば、そう信じたかった国民が存在していたのであろう。その結果生み出された共同幻想が国家衰退への道を加速化させたということだろう。

 

日本は今このような道を辿りつつあるのではないか。

思いつくままに、収奪的な政治と経済制度を列記してみる。

政府は、2014年に集団的自衛権の行使を閣議決定、2015年には多くの専門家が憲法違反と指摘するなか平和安全法制を強行採決、2023年には防衛三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を閣議決定した。

国家防衛権とは根源的に戦争を誘因・惹起する性格を有するものであり、その行使は憲法によると国権の発動に依拠するものである。したがい、本来ならば国権の最高機関である国会で討議を経てから法案成立となるべきものであろう。しかし政権は独断決定し、予算の担保も得ないまま総額43兆円の防衛費増額に着手したのである。

民主主義政治とは多数派が常に正しいものとする政府は、いつでも戦争ができる国へと日本を変えてしまったのではないだろうか。

 

国民生活に目を転じる。利便性向上の一手段がデジタル化である。しかし、手段を目的化することが政策だとする日本政府のDNAは普及の進まぬマイナンバーカードに業を煮やした挙句、健康保険証を廃止してマイナカードに一体化すると決定。かつてコロナに打ち勝ったオリンッピクにすると宣言して、運動会と命を天秤にかけた元首相がいた。今度はビットとアトム(人の生命)を天秤にかけるというのである。

デジタル化に対応できない診療所・個人医師の廃業そして暗証番号など初耳の高齢者のトラブルが続発している、今秋には日本各地で医療難民が発生することだろう。国民の命まで危険にさらして強硬に進めるデジタル化に政治の正当性などはまったくない。

政府念願の脱デフレ政策は外的要因が寄与してインフレ転化をしているらしい。大きな外的要因は円安だが、円安は加速化して輸出企業は望外の利益を計上するも国民は円安がもたらす物価高の影響をもろに被っている。これならデフレ時代の方がよかったという庶民の声が聞こえ(私もそう思う)、さらに金利上昇と増税が追い打ちをかける。金利を上げたら円安対策になると政府はいうが円安は国の価値が低下しているためではないか。現象と本質を混同した政府お家芸の手段と目的のすり替えはいい加減にしてほしい。円安だろうとデフレだろうとつまらぬ御託などはどうでもいい、国民は生活の恒常的な安定を渇望しているのである。

少子化対策としての子育て支援金を医療保険料に上乗せして徴収すると首相は言い始めた。少子化対策という将来に向けた政策と今ここに存在する問題の解決策としての子育て支援とは性格が異なる。また、なぜ支援金を医療保険から徴収するのか。様々な理由から結婚・子作り回避を選択する人々など支援金の恩恵に浴さぬ人の医療保険から徴収などまったく筋が通らない。少子化対策はカネで解決できるという発想そのものが間違いで、子育てに名を借りた収奪的増税である。

国民所得をベースとする国民負担率は1970年度24.9% 1980年度39.5%と上昇を続け2021年度に48.1%と今や50%近い。なんと所得の半分近くが国民のふところから持って行かれる。そんな不満を抑えるべく政府は給与アップに向けて労働組合に代わり陣頭指揮を始めた、共産中国も真っ青となる企業の懐に手を入れる指令型経済政策の強行である。そのかいあって給与所得者の給与は5%上がったと政府はいうが、それは大企業のはなしで全国企業数の99.7%を占める中小企業ではその大半が賃上げの余裕などない。それどころか大企業の給与アップのしわ寄せによる買いたたきを心配しているという。非正規社員の給与に至っては賃上げという概念に算入されているとは思えない。

昨年から導入されたインボイス制度は生産性低下を招く弱者収奪のシステムだ。

年間売上一千万円以下の零細企業と個人事業者は、苦行ともいえる事務処理を強いられている。政府は情け容赦なく弱者のなけなしの収入(消費税)を強奪し始めたのである。いっぽう、トヨタなど輸出大企業20社の2022年度消費税還付金は1.9兆円を超えている。持てる者にはさらに持てるように、持たざる者はさらに貧しく。こんな悪代官と小役人根性が零細企業の事業継承候補者・自営業のやる気を奪い若い芽を摘んでいく。

4万円の定額減税には呆れるばかり、裏金問題は頬被りして恩着せがましくも政府は給与明細書に減税額を明記せよと指示をした。そもそもお上は給与明細書をみたことがあるのだろうか。定額減税の開始は6月で目の前に迫っている、従業員ごとに異なる家族構成などから所得税地方税の減税分を各月ごとに計算するなど作業は膨大、この手間だけで中小企業は大騒ぎ、税理士さんもお手上げ状態と聞く。一過性の減税のため後ろ向きの作業を強要される経理担当者、たとえ10万円もらってもこんな作業はご免だという。また年収二千万円以上の給与所得者は対象外と言いながら、いったん定額減税をおこなって年末調整で回収せよという。これでは、高額所得者への無利子融資ではないか。

こんな無意味な作業を押し付けて生産性向上を企業に臨むとは呆れるばかり、所得アップから経済成長への好循環などとっくにお蔵入りのトリクルダウン論理を持ち出して政府は進軍ラッパを吹き続ける。しかし行先不明の進軍で国民は動きようがない。

 

「国家は、善と悪についてあらゆる言葉を駆使して嘘をつく。国家が何を語っても、それは嘘である―国家が何を持っていようと、それは盗んできたものなのだ。」

ニーチェツァラトストラはかく語りき』