bekiranofuchi’s blog

社会を独自の視点で描いてみたいという男のつぶやき。

医療崩壊より政治崩壊だ

思うに我が国では医療崩壊を錦の御旗として医療機関からの感染検査依頼さえも抑制、検査の母数を示さぬ客観性のない数字をもって「持ちこたえてる」と独善的な判断で必死にオリンピックの完全遂行を目指していると見えます。これでは人の命と運動会を天秤に掛ける道義の破滅です。感染対策ではなくオリンピック対策に狂奔する政治姿勢は、政治崩壊とも言えます。

映画パラサイトは日本の悲喜劇か。

今年のアカデミー賞四部門を受賞した映画「パラサイト 半地下の家族」を観ました。

 

路地裏の半地下に暮らす夫婦と息子、娘、四人の貧困家族。ある日、息子は友人から家庭教師の代役を紹介をされる。それをキッカケに富豪の家に娘は美術教師、父は運転手そして母も家政婦として入り込み一家でパラサイト生活を送る。しかし至福の時季は予期せぬ出来事に端を発しもろくも突然に崩壊してしまう。この物語をあたかも観客がジェットコースターに乗ってるかの如くテンポよく面白くまた躍動に満ちて悲しくも描き切っています。

 

貧富格差をユーモラスに描いたなどという批評を目にしますが、そんな薄っぺらな映画ではありません。深読みをすると非常に奥深く重い映画です。冒頭の半地下からの路上描写の映像は観客の視座を不安定にさせて思考を錯綜させます。例えば、哲学的にいうと半地下の生活とは理性の潜在下にあるリビドーの暗喩とも読めます。また政治的には、いつまで経っても水面上に浮上できずに米国に寄生する日韓両国の悲喜劇とも言えます。このように観客の解釈を多様に展開させる挑戦的な映画なのです。

 

COVID-19と人災

中国の武漢が発生源とされる新型コロナウイルス=COVID-19ですが、その感染リスクを指摘したお医者さんは中国政府よりデマ騒伝罪に問われ、患者対応により自らも感染して亡くなられたのことです。

彼の指摘を真摯に中国政府が受け止めていれば、ここまで大きな問題にはならなかったことでしょう。これは一種の失政であり原因は人災ともいえるのではないでしょうか。

 

翻って日本では横浜港の洋上に3千人のクルーザーを放置し世界が洋上の監獄だと指摘して注視する中いまだ確たる対応ができません。先日は善意の差し入れのシュウマイ弁当4千食が無駄になったとも聞きます。その無策を嘲笑うかのように国内各地で感染者が続発し、お亡くなりになる人まで出てきています。この方はなんと四ヶ所の診療所で診察を受けていたとのことです。いかに新種のウイルスとは言え日本の医療レベルの低さに驚くばかりです。

抜本的方策は不得手でも対処療法は得意なはずの日本はどうなったのかと思います。

 

そこで思い出すのは、モリカケ加計学園です。加計学園は、国家戦略特別区域諮問会議にて「先端ライフサイエンス研究や地域における<感染症対策>など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置」の対応として新設されました。

加計学園が選定された経緯については様々な疑惑がありましたが、なかでも安倍首相の関与がその大きなものでした。ここで疑問です。安倍首相を追及した野党は、なぜ加計学園感染症研究の成果を問わないのでしょうか。国家戦略の成果を検証する絶好の機会ではありませんか。

また国の感染症に対する統括部門たる国立感染症研究所はどうなってるのでしょうか。

一部の報道で、年間予算が10年間で20億円減らされていると聞きました。そこで調べてみると昨年の予算は対前年比で1億4千万円ほど減額となっていました。内訳は試験研究費他が5,902から5,869 施設設備費が290から181です。(単位は100万円)

これをもって政府の責任云々は言えませんが、国家予算の配分が妥当なのか、そして使途は適正なのか疑問を持たざるをえません。

国家予算を決めるのも運用するのも人です。

ここに問題があるとしたら、やはり人災なのでしょうか。

フットボールはなぜ日本ではうけないのか。

例年のごとくスーパーボールを見ながらフットボールが日本で人気がないのは何故かと思いました。

 

フットボールの魅力は多々ありますが、ワン・プレイ毎にタイムが止まりその時点での点差と残り時間から最適なプレイ(戦術)を瞬時に選択して勝利への確度を高める戦略性そこに最大の魅力があると思います。プレイ事前の推定確率と選択した戦術から得た情報を加味したベイズ推定による攻守のプレイ推測が観客には知的興奮をもたらします。プレイが中断する都度この確率推定ゲームはプレーヤーと観客を知的興奮の坩堝に巻き込みます。スピード感あふれるプレイさらには判定にたいしてチャレンジできる批判精神、最後の数秒で逆転が可能な意外性なども魅力です。

 

戦略策定が不得手で周囲環境に対応するだけの戦術は得意でも外部や部下からの批判を忌避する多くの日本企業そして日本政府とはまったく別の世界です。このような社会に順応するだけの多くの日本人にはやはり好まれないのでしょうね。

公務員法の不思議

私達が理解している公務員のイメージと、法律で定められている「公務員」とではどうも違っているように思えます。

憲法国家公務員法とでは公務員に関する明確な定義がなく、その役割にも齟齬があるようです。そのような疑問を考察をしてみました。

 

Ⅰ.憲法における公務員とは。


日本国憲法』 

第15条(公務員)

 公務員を選定し、及びこれを罷免することは国民固有の権利である。 

2 すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。 

3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

 

下線は私が引いたものですが、この条項でいう公務員とは、私たちが通常に公務員と呼んでいるお役所の職員ではなく、どうも選挙で選定される政治家のことになりそうです。

また公務員には国家公務員と地方公務員がありますが、この規程はどうなっているのでしょうか。国家公務員については憲法、第7条の5号および73条の4号に「官吏」として記載があります。なぜ国家公務員ではなく官吏となっているのでしょうか。

「官吏」という用語は国家公務員法第1条の2号に憲法73条を援用した記載がありますがその定義はなく1号の「国家公務員たる職員」を暗喩する形になっています。つまりこの二つの条文(官吏の定義のない)から国家公務員の意味するところを解読せよと解されます。
 

 

第7条

天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。

二 国会を召集すること。

三 衆議院を解散すること。

四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。

五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。

 (以下略)

 

第73条(内閣の職務)

内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。

一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。

二 外交関係を処理すること。

三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。

四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。

  (以下略)


Ⅱ.国家公務員法における公務員とは。

憲法では国家公務員の用語も記載もありませんが、国家公務員法というものがあります。


国家公務員法』 

第1条

この法律は、国家公務員たる職員について適用すべき各般の根本基準(職員の福祉及び利益を保護するための適切な措置を含む。)を確立し、職員がその職務の遂行に当り、最大の能率を発揮し得るように、民主的な方法で、選択され、且つ、指導さるべきことを定め、以て国民に対し公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とする。

2 この法律はもっぱら日本国憲法第73条 にいう官吏に関する事務を掌理する基準を定める。

 (以下略)  

第2条

 国家公務員の職は、これを一般職と特別職とに分つ。

2 一般職は、特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を包含する。

3 特別職は、次に掲げる職員の職とする。

一 内閣総理大臣

二 国務大臣

三 人事官及び検査官

四 内閣法制局長官

五 内閣官房副長官

五の二 内閣危機管理監及び内閣情報通信政策監

五の三 国家安全保障局

五の四 内閣官房副長官補、内閣広報官及び内閣情報官

六 内閣総理大臣補佐官

七 副大臣

七の二 大臣政務官

七の三 大臣補佐官

八 内閣総理大臣秘書官及び国務大臣秘書官並びに特別職たる機関の長の秘書官のうち人事院規則で指定するもの

九 就任について選挙によることを必要とし、あるいは国会の両院又は一院の議決又は同意によることを必要とする職員

十 宮内庁長官侍従長東宮大夫、式部官長及び侍従次長並びに法律又は人事院規則で指定する宮内庁のその他の職員

十一 特命全権大使特命全権公使、特派大使、政府代表、全権委員、政府代表又は全権委員の代理並びに特派大使、政府代表又は全権委員の顧問及び随員

十一の二 日本ユネスコ国内委員会の委員

十二 日本学士院会員

十二の二 日本学術会議会員

十三 裁判官及びその他の裁判所職員

(以下略)

Ⅲ. 不可解なこと。

1.国家公務員法では、憲法でいう官吏を公務員と呼んでいます。そして公務員は職員集団の福祉および利益の保護確立をする。その上で、国民に対する職員の集団主義的な運営を目指すものとしています。

2.この内容を換言しますと、国民ではなく公務員が主役でまず公務員自身の福祉および利益の保護を確立して、そののちに国民に対する集団運営を行う、これでは、お役人が事実上の主権者ということになりかねません。そして政治家は特別職として公務員の添え物扱いとなっています。いうならば添え物を選ぶ国民に主権はなくお役人が主権者という隠喩になっているように思えます。

3. 公務員の任用は「国家公務員法および地方公務員法に基づいて、公平な基準により能力を試験し、適任と認められたものを選抜すること」とされています。

  しかし国家公務員の特別職に関する規程はありません。政治家については憲法で任用が規定されている(選挙)ということでしょうか。そうであれば裁判官や宮内庁長官などの選挙はないのはおかしなことです。

 以上のように公務員、特に国家公務員とは不可思議な存在に思えます。                              

                                  以上

 

 

*ご参考までに地方公務員法の一般職と特別職の規程に関する第3条および第6条任命権者を以下に掲載しておきます。

第三条 地方公務員(地方公共団体及び特定地方独立行政法人地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)のすべての公務員をいう。以下同じ。)の職は、一般職と特別職とに分ける。

2 一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする。

3 特別職は、次に掲げる職とする。

一 就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職

一の二 地方公営企業の管理者及び企業団の企業長の職

二 法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた委員及び委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤のもの

二の二 都道府県労働委員会の委員の職で常勤のもの

三 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職

四 地方公共団体の長、議会の議長その他地方公共団体の機関の長の秘書の職で条例で指定するもの

五 非常勤の消防団員及び水防団員の職

六 特定地方独立行政法人の役員

(この法律の適用を受ける地方公務員)

第四条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。

2 この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。

(人事委員会及び公平委員会並びに職員に関する条例の制定)

(任命権者)

 第六条 地方公共団体の長、議会の議長、選挙管理委員会、代表監査委員、教育委員会、人事委員会及び公平委員会並びに警視総監、道府県警察本部長、市町村の消防長(特別区が連合して維持する消防の消防長を含む。)その他法令又は条例に基づく任命権者は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律並びにこれに基づく条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、それぞれ職員の任命、人事評価(任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価をいう。以下同じ。)、休職、免職及び懲戒等を行う権限を有するものとする。

2 前項の任命権者は、同項に規定する権限の一部をその補助機関たる上級の地方公務員に委任することができる。

 

 

 

予測が当たったBREXIT

                     2016年6月初旬に私は以下のよう国民投票を予想しました。

「英国はEUを離脱するであろう」

その通りになりました。

 

英国のEU離脱についてどうも巷間では政治、経済の問題として論議されているようです。

しかし私はこの問題は文化の問題として考えるべきだと思います。

その理由は以下の通りで英国民はEU離脱を選択すると思います。

 

EUを主導するのは名実ともにドイツであることは言を俟たないと思います。

昨今のドイツ隆盛の主因となったのは、ソ連崩壊というロシアの「陰の協力」と宿敵フランスの「陽の協力」という歴史のアイロニーだとの名言があります。

この言葉はまさにEUの本質を言い当てていると言えます。

 

EUの本質とは経済云々ではなく異文化の野合がもたらした意図せぬ結果としてのドイツ文化圏の強化と拡大であり、その現状はユニコーンたるドイツの帝国化とその他諸加盟国のドイツに対する服従と怨嗟の抜き差しならぬ絡み合いだと思います。

 

ドイツというのは偉大な文化国家だとは思いますが人間存在の複雑さを視野から失いがちでアンバランスゆえの強みと恐ろしさがあります。

その権威主義的文化はドイツの指導者たちが専制支配的立場に立つと国民に固有の精神的不安定性を生み出してきたと考えています。

いまやEUの盟主となったドイツはその独裁的立場を強化するとともに第二次大戦端緒の電撃作戦を彷彿とさせるかのごとき中国への急接近を図りEU枠外へのドイツ圏拡大化に邁進し民族国家としての精神的沸点をEUにまで投射しかねない危険性を覚えます。

ドイツとの長年にわたる抗争の歴史から英国がこのような疾風怒濤ドイツへの危惧を持たぬはずはないと思います。

 

それでも経済的合理性に立脚した判断は国家戦略としてはあり得るかもしれません。

しかし問われているのは国民の意思であります。

資本主義そのものがその綻びから限界へと死に至る病のいま、経済的合理性という即物的判断から歴史的敗北ともいうべき民族の屈辱に耐えてまで、ドイツ支配下EU圏に残留する価値があるのでしょうか。

 

世界の耳目を集めた英国の選択がEU残留となると満天下注視のもとに、ドイツ国民は「金目ゆえの協力」という不倶戴天の敵からのこれ以上ない皮相的な贈り物を享受し慢心して現代版第三帝国の妄想に走らぬとも限りません。

それはドイツへの勝利の女神の祝福を世界に印象付け、仇敵の繁栄に自らの身を投げ出し延命を図った英国には敗者の烙印を焼き付けることになりかねないからです。

英国民が寄って立つべきは金目ではなく世界が認める栄誉ある大英帝国の歴史と不屈の国民精神ではないでしょうか。

かつてはその精神で世界を制覇したのですから。

英国民に骨肉化された大英帝国の誇り、それは経済的合理性という選択肢を葬り去るのではないかと思います。

 

※ここで私はドイツを非難する意図は全くありません。むしろドイツ好きですので追記します。

 

BREXITと地政学

(まえおき)

12月20日付ロイターは「英下院は20日、欧州連合(EU)離脱に向けた関連法案の概要部分を巡る採決を実施し、賛成多数で可決した。主要なハードルを突破し、ジョンソン首相が目指す来年1月末のEU離脱達成は現実味を帯びてきた。」と報じています。

 

国民投票から3年半が経過して英国のEU離脱いわゆるBREXITが実現するようです。

 

しかし英国国立経済社会研究所(NIESR)ではボリス・ジョンソン英首相がEUとまとめた離脱協定案に従って英国がEUを離脱した場合、離脱しない場合に比べて年間700億ポンド(約9兆8000億円)の経済損失が見込まれるとの報告書を発表しています。

 

BREXITに対するこのような否定的な評価は多くの国々や専門識者間では共通認識のようです。

確かに経済がボーダレス化された世界の枠組みから考えますと、EU規制から解放され移民制限などにより雇用環境の改善や社会福祉面で生じるメリットを考慮したとしてもEU離脱は英国にとり負の側面が大きいものと思います。

 

 (地政学的にみると)

しかしBREXITという事態を地政学的な観点から考えてみると異なる局面が見えてくるような気がします。

 

まず英国の地勢はユーラシアの、そしてEU(いわゆる旧大陸)の大西洋における玄関口の地位を占めています。また南北のアメリカ大陸(いわゆる新大陸)へ海路で直結できるというEUに比して優位な立地にあります。いっぽう西の玄関口を英国に抑えられたEUは東にロシア、北には北極海そして南にはトルコそしてイランが位置しています。

 

このような英国とEUの地勢図を背景に、地政学上これから大きな影響を及ぼすと予測される気象の問題を考えてみます。

気象がこの地域に与えている大きな影響は気候の温暖化であろうかと思います。地政学的に考えますと温暖化の一層の進行により北極海経由の航海路が現実味を帯びてくると思えます。

さらにグリーンランドへの評価も高まることでしょう。昨年末にトランプ大統領グリーンランドの購入を言及したように将来グリーンランドが水資源大国となりうる可能性もありえます。

これらの気候変動による影響は、米国やEUに比べ北極海グリーンランドへの距離の利点がある英国とカナダ両国(英連邦)にとり地政学的のみならず経済的にも明るい材料といえるでしょう。

たとえば英国から太平洋への航路ですが、15世紀末の喜望峰航路から19世紀のスエズ運河航路そして21世紀には気候温暖化の恩恵により北極海を経由する最短路の位置を獲得できることになります。英国からロシア北岸を周りベーリング海峡に至り南下すると、太平洋の両岸にシーパワー*とランドパワー(*ハートランド参照)の大国である米国とロシアが控えています。

 

気象問題からEUの地勢に目を転じますと、EUの東側、ユーラシアの生命線と言われたハートランド*を抱えるロシアは先日150年来の宿願をようやく果たし長年の夢を現実化しています。

その宿願とはクリミア戦争ロシア革命そして第二次世界大戦と三度にわたり頓挫を余儀なくされたハートランドを縦断する2500㎞の鉄道を完成させたことです。

バルト海沿岸のサンクトペテルブルクからハートランドを縦断してセヴァストポリに至る黒海への出口を確保したのです。そのさきにはかって国際連盟の本部拠点の候補にまで挙がった東西文明の合流地コンスタンティノープルイスタンブール)が控えています。

さらにロシアの南東にはランドパワー大国の中国が位置し一帯一路のインフラ戦略によりシーパワーを獲得して中華帝国復活への道を邁進しています。

 

(歴史と地政学

ロシアも中国もランドパワーの国です。

しかし、かつては中国からインドを経てコンスタンティノープルイスタンブール)に至るまで英国のシーパワーがハートランドの4分の3を抑えていたのです。

 

ランドパワー論で有名な地政学者のマッキンダーはその著作で次のような指摘をしています。

海上における勝利の頂点としてのトラファルガーとナポレオン戦の戦局の逆転をうながしたモスクワとが、真のヨーロッパの東西の極限に近い位置にあった。」

マッキンダーのこの指摘は第一次世界大戦後の1919年のことでした。

ところが第二次世界大戦においても彼の言葉を裏付ける事態が生じています。それは、ヒットラーの進撃をロンドン空中戦で、また戦局の転換点となったスターリングラード(現ヴォルゴグラード)地上戦で、EUに相当する地域を含む真のヨーロッパの東西両極で食い止めたのです。

 

英国のシーパワーとロシアのランドパワーは不作為にもかかわらず結果的には協力して、真のヨーロッパの守護神のごとく 現EU地域を歴史的に護持してきたとも言えます。

 

バルト海から黒海に直結するロシア帝国夢の鉄路が縦断するハートランドの西側にはバルト海沿岸のポーランドから南下してチェコスロバキアハンガリーそしてルーマニアを経て黒海沿岸のブルガリアに至るまで旧ソ連の友邦諸国が連なります。

これら諸国はいずれも真のヨーロッパに位置しており第一次、第二次両世界大戦の最大激戦地でした。今はEU加盟国となっていますが必ずしもEUの仕組みには満足をしていない様子です。

 

(まとめ)

「歴史は繰り返す」といわれます。

 

この論拠について、次のように私は解釈しています。

歴史を編んでいくのは社会の動態である。

その社会というものは既存の環境を前提としながらも、それを改変していく、それが動態である。

改変とは、歴史の記憶と未来の希望(欲望)を動因とする集団的な動員の継起である。

その結果を考察すると、そこには歴史を通じて一定の軌道のようなものが見いだせる。

 

これがいわゆる歴史の経路依存性*です。

「いつか来た道」というように国家もまた経路依存性を帯びるものといわれます。

 

BREXITという事象がハートランドの西側諸国にどのような影響を与えるかは予測がつきません。

しかし明治維新をはじめ辛亥革命ロシア革命など国家の軌道は内圧よりむしろ強大な外圧により変更されることが数多くあることを歴史は語っています。

外圧に翻弄され続けてきたハートランドの西側諸国(旧東欧)の歴史を顧みますと「ハートランド」、そして「歴史の経路依存性」という二つのキーワードは頭の片隅に置いておくべきかと思います。

 

ひょっとするとBREXITEU包囲という予期せぬ歴史的なハズミを誘発することになるかもしれませんから。

                                                         以上

 

 

 

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 *ハートランド(heartland)

オックスフォード大学で地理学を学びのちに現代地政学の祖といわれたH.J Mackinderがその著作「Democratic Ideals and Reality」(日本版、「マッキンダー地政学」)で次のように使用した。

Who rules East Europe commands the Heartland;

Who rules the Heartland commands the World-Island;

Who rules the World-Island commands the World.

注:World-Island とは ユーラシア旧世界のこと。

彼は「Foreign Affairs , July 1943」 でハートランドを以下のように説明している。

ユーラシアの北の部分であり、かつまた主としてその内陸の部分、北極海の沿岸から大陸の中央の砂漠地帯に向かって延びておりバルト海黒海とのあいだの大きな地峡がその西側の限界になっている。この概念は地図上では明確に限定することはできない。

 

*シーパワー(sea power)

地球表面の12分の9は海が占めており(12分の2は旧大陸、12分の1は新大陸その他の島など)、ここから歴史的な海戦の歴史を分析したアルフレッド・セイヤー・マハンの「海上権力史論」(The Influence of Sea Power upon History, 1660~1783)が生まれシーパワーはランドパワーを包囲して凌駕するといわれたこともありました。

 

*経路依存性(path dependency

あらゆる状況において、人や組織がとる決断は過去に選択した決断に制約されるという理論。

具体的な例としてよく取り上げられるのは、キーボードのqwerty配列で、効率的な文字配列はいくらでもあるのに初期に普及したqwertyを今でも選択している。

この論理からネット時代の幕開けにwinner takes allと予測されたがまさにそのとおりでネットの世界はGAFAの独占となった。